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犬や猫の尿検査・糞便検査の重要性とは|どんな病気かわかる?検査タイミングも解説
「トイレでの様子が気になる」「便の色がいつもと違う気がする」そんな小さな変化が、実は病気のサインかもしれません。
犬や猫は体調の変化を言葉で伝えることができないため、日々のちょっとした気づきと定期的な健康チェックがとても大切です。
特に尿検査や糞便検査は、体の内側の状態を知るための基本的で重要な検査です。
今回は、尿検査・糞便検査の役割と、どのような病気の予防に役立つのかについて解説します。
■目次
1.尿検査で早期発見につながる主な病気
2.尿検査で調べる主な項目と、そこからわかること
3.日常で飼い主様が気をつけたい排尿のチェックポイント
4.尿検査のタイミングと採取方法
5.糞便検査でわかる主な病気
6.日常の排便で飼い主様が気をつけたいポイント
7.糞便検査のタイミングと採取方法
8.検査で異常が見つかった場合
9.早期発見・早期治療のメリット
10.まとめ
尿検査で早期発見につながる主な病気
尿検査では、愛犬や愛猫の体の中で起こっている異常をいち早く見つけることができます。
以下のような病気が、尿の状態からわかることがあります。
◆腎臓病(慢性腎臓病・急性腎不全)
腎臓の機能が低下すると、尿の濃さやタンパク質の漏れ方に変化が現れます。
特に慢性腎臓病は、初期には目立った症状がないことも多いため、尿検査や超音波検査(エコー)などによる早期発見がとても大切です。
◆尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎 など)
細菌の感染によって膀胱や腎臓に炎症が起こると、尿の中に白血球や細菌、血液が混じることがあります。
頻尿や血尿などの症状が見られる場合は、早めの検査が必要です。
◆尿石症(結石症)
尿の中に結晶や結石ができ、膀胱や尿道を傷つけてしまう病気です。
症状が進むと排尿時の痛みや出血、尿が出にくくなることもあります。
◆糖尿病
血糖値が高い状態が続くと、尿の中に糖が出てくることがあります。
尿検査で糖が検出されることで、早期に異常に気づける場合があります。
犬の糖尿病についてはこちらで解説しています
猫の糖尿病についてはこちらで解説しています
◆肝疾患
肝臓の機能に異常がある場合、尿の色が濃くなったり、ビリルビン(胆汁の色素)が検出されたりすることがあります。
肝臓の異常を示すサインとして、尿の変化に気づくこともあります。
尿検査で調べる主な項目と、そこからわかること
尿検査では、愛犬や愛猫の健康状態をさまざまな角度から確認することができます。以下のような項目を調べることで、体の中で起きている異常のサインに気づくことができます。
◆尿の比重(ひじゅう)
尿の濃さを表す数値で、腎臓がしっかりと尿を濃縮できているかを確認する目安になります。
腎機能が低下している場合、尿が薄くなる傾向があります。
◆pH(ペーハー)
尿の酸性・アルカリ性の度合いを示す数値です。
この値によって、どのようなタイプの結石ができやすいかを予測する参考になります。
◆タンパク質・糖・血液・白血球・ビリルビン
これらの成分が尿中に多く含まれている場合、以下のような病気の可能性が考えられます。
・タンパク質:腎臓病のサイン
・糖:糖尿病の疑い
・血液(潜血):尿路の炎症や結石、腫瘍など
・白血球:感染症の兆候
・ビリルビン:肝臓や胆道の異常を示すことがあります
◆沈査(ちんさ)
尿に含まれる固まり(固形成分)を顕微鏡で調べる検査です。
細菌や結晶、赤血球、白血球などを確認することで、膀胱炎や尿石症、出血の有無などを詳しく調べることができます。
日常で飼い主様が気をつけたい排尿のチェックポイント
尿の変化は、愛犬や愛猫の健康状態を知る大切な手がかりです。
ふだんの生活の中で、次のようなポイントを意識して観察してみましょう。
<尿の色>
・透明すぎる:水のように薄い場合は、腎臓やホルモンの異常が疑われることもあります。
・濃い黄色:濃縮された尿は健康な範囲内でも見られますが、水分不足のサインかもしれません。
・赤みがかっている:血尿の可能性があるため注意が必要です。
・白く濁っている:細菌感染や結石などが関係していることがあります。
<尿の量や回数>
・尿が多すぎる/少なすぎる
多飲多尿や乏尿(尿が少ない状態)は、腎臓・内分泌系の異常が関係する場合があります。
・トイレの回数が増えている
頻尿や少量ずつしか出ない場合、膀胱炎や尿路のトラブルが疑われます。
<排尿時の様子>
・痛がる、鳴く、力む
排尿時に不快感があるような仕草は、膀胱や尿道の異常のサインです。
・時間がかかる/途中で止まる
スムーズに排尿できないときも、尿路の問題が関係している可能性があります。
尿検査のタイミングと採取方法
尿検査は、体の内側の異常を早期に見つけるための大切な検査です。
では、どんなタイミングで検査を受けるべきなのでしょうか?
また、採尿はどうやって行えばいいのか、気になるポイントもあわせてご紹介します。
<尿検査がすすめられるタイミング>
◆年1回の健康診断の一環として
特に7歳以上の高齢の犬や猫は、腎臓やホルモンの異常が出やすいため、毎年のチェックが重要です。
◆頻尿・血尿・尿が出にくいといった症状があるとき
泌尿器系の病気が疑われる場合、早めの検査が症状の悪化を防ぐことにつながります。
◆体調不良や体重減少があるとき
食欲や元気があっても、尿に異常が出ていることがあります。なんとなく様子がおかしいと感じたときも、尿検査のタイミングです。
◆持病(腎臓病・糖尿病など)がある場合の定期チェックとして
病気の進行具合を確認するために、定期的な尿検査が必要になることがあります。
<尿の採取方法>
◆犬の場合
お散歩中に排尿したタイミングで、スポイトや専用カップなどを使って、直接尿を容器に取ります。
◆猫の場合
猫用トイレの中に敷くトイレシートを裏返す、または吸収しない砂を使うタイプの採尿用トイレを活用するのも方法のひとつです。
排尿後は、スポイトで尿を吸い取り、容器に移します。
<採取前の注意点>
時間が経つと細菌が増えたり、成分が変化したりしてしまうことがありますので、採取後は1〜2時間以内に動物病院へ持参してください。
また、採取前に水分制限や食事制限などは必要ありませんが、お薬を服用中の場合は、あらかじめ獣医師にご相談ください。
糞便検査でわかる主な病気
糞便検査では、愛犬や愛猫の消化管の状態を確認したり、寄生虫や病原体への感染がないかを調べたりすることができます。
見た目ではわからない異常を見つける手がかりにもなる、大切な検査のひとつです。
◆寄生虫感染(回虫・鉤虫・鞭虫・瓜実条虫 など)
腸内に寄生する虫の卵は、肉眼では確認できないことがほとんどです。
糞便検査では、こうした寄生虫の卵を顕微鏡で見つけることができるため、症状が出る前の早期発見につながります。
特に、外に出る機会が多い犬や、ノミの駆除が不十分な場合には注意が必要です。
◆原虫感染(コクシジウム・ジアルジア など)
コクシジウムやジアルジアといった原虫は、仔犬や仔猫で下痢の原因になりやすい病原体です。
健康な成犬・成猫でも、免疫が落ちているときに感染すると下痢や軟便などの症状が見られることがあります。
ほかの動物や水・土などから感染することもあるため、集団飼育や保護犬・保護猫の場合は特に注意が必要です。
◆血便の検出(潜血反応)
肉眼ではわからないほどの微量の血液(潜血)も、糞便検査で検出することができます。
消化管の炎症やポリープ、腫瘍などが原因の場合もあるため、定期的なチェックで異常に早く気づくことができます。
日常の排便で飼い主様が気をつけたいポイント
便の状態は、消化管のトラブルだけでなく、体全体の健康状態を映し出すサインでもあります。
ふだんから排便の様子をよく観察することで、体の異変にいち早く気づくことができます。
次のような点を日常的にチェックしてみましょう。
<便の硬さ>
・ゆるすぎる(下痢):消化不良や感染、食事の影響などが考えられます。
・硬すぎる(便秘):水分不足や運動不足、腸の動きの低下などが原因になることも。
いつもより柔らかい、形が崩れているなどの変化にも注意が必要です。
<便の色>
通常の便は茶色〜黄色みを帯びた色をしています。見慣れた色と違うと感じたら、注意して見守りましょう。
・黒色便:食道や胃、十二指腸といった上部消化管の出血の可能性があります。
・赤色便:肛門周辺や大腸からの出血が考えられます。
・灰白色便:胆汁が出ていないサインで、肝臓や胆道系の異常が疑われます。
<便の量や頻度>
便の量が少ない・多すぎる、回数が増えた・減ったなどの変化も、体の不調のサインとなることがあります。
また、食事内容の変更や、ストレス、運動不足なども影響するため、生活全体を見直すヒントにもなります。
<においや粘液の付着>
・いつもと違う強いにおいがある
・便に粘液(ゼリー状のもの)がついている
このような変化が見られる場合、腸の炎症や感染が隠れていることがあります。
糞便検査のタイミングと採取方法
「お腹の調子が悪いときにするもの」と思われがちな糞便検査ですが、実は健康管理のうえでもとても大切な検査です。
特に仔犬や仔猫では、体に負担の大きい寄生虫感染などが見つかることもあるため、定期的なチェックが重要です。
<糞便検査がすすめられるタイミング>
◆年1回の健康診断として
特に仔犬・仔猫の時期は寄生虫検査が重要です。見た目に異常がなくても、感染していることがあります。
◆下痢・便秘・血便・粘液便など、便に異常があるとき
消化管の不調や感染が疑われるため、早めの検査が大切です。
◆嘔吐が続くとき
原因が腸にある場合、便の状態がヒントになることがあります。
◆急に体重が減ってきたとき
寄生虫感染や栄養の吸収不良など、消化管のトラブルが隠れていることがあります。
◆保護犬・保護猫、新しく家族に迎えたときの初診時に
保護された犬や猫は、外部や内部の寄生虫を持っている可能性があるため、初期の検査はとても大切です。
◆多頭飼育の場合の定期チェックとして
一頭に感染があった場合、他の動物にも広がる可能性があるため、定期的な確認が安心につながります。
特に仔犬・仔猫では、寄生虫感染が命に関わることもあるため、できるだけ早い段階での検査を心がけましょう。
<糞便の採取方法>
糞便を採取する際は、以下のポイントに注意しましょう。
◆新鮮な便を採取する
排泄後できるだけ早く、理想は2〜3時間以内に採取し、病院へ持参してください。
◆清潔な容器またはビニール袋に入れる
病院で専用の容器をもらえることもあります。ご自宅では、チャック付きの袋などでも代用可能です。
◆スプーンや割り箸などを使って取り分ける
便は直接手で触れずに、清潔な道具を使って採取してください。
◆水や猫砂、尿ができるだけ混ざらないようにする
混ざってしまうと検査の精度に影響が出ることがあります。
※猫の場合は、猫砂が少し付着していても検査できることがありますが、事前に動物病院に確認しておくと安心です。
検査で異常が見つかった場合
検査で異常が見つかった場合、病院では次のような流れで対応が進みます。
1.異常の説明を受ける
検査結果の数値や、どのような病気の可能性があるかについて、獣医師から説明があります。
2.必要に応じて追加検査を提案される
初期の検査だけでは確定できないこともあるため、詳しい原因を調べるために追加の検査が行われることがあります。
3.診断が確定したら治療方針を決定
病気が明らかになった時点で、治療の内容や今後のケアについて具体的な説明を受けます。
なお、異常が軽度の場合は、すぐに治療せず経過観察をしながら様子を見ることもあります。
ただし、重篤な病気の可能性がある場合は、早急に精密検査や治療を始めることが大切です。
<追加検査の目的と内容>
追加の検査は、病気の確定診断を行ったり、進行の程度を把握したりするために必要です。
◆血液検査
体内の炎症・感染、貧血、腎臓や肝臓の機能などを詳しく調べます。
◆超音波検査・レントゲン検査
腎臓、膀胱、腸などの形や大きさ、構造の異常を確認するために行われます。
◆尿・便の培養検査
細菌や寄生虫などの種類を特定し、適切な治療方法を選ぶための検査です。
これらの検査は、正確な診断や治療の計画を立てるうえで欠かせません。
早期発見・早期治療のメリット
病気は、早い段階で見つかるほど治療の選択肢が広がり、体への負担も軽く済みます。
早期発見には、以下のようなメリットがあります。
・病気の進行を抑えられる
・治療の選択肢が広がる
・治療費や負担が少なくて済む
・愛犬・愛猫の生活の質を維持できる
何より、愛犬・愛猫と飼い主様が、安心して一緒に過ごせる時間が長くなることが一番のメリットです。
犬や猫は、7歳を過ぎた頃から少しずつ腎臓機能の低下やホルモンバランスの乱れが起こりやすくなってきます。
ただ、これらの変化は外から見てもわかりづらいため、見逃されがちです。
だからこそ、定期的な尿検査・糞便検査によって異常に早く気づき、必要に応じて治療や生活の見直しを行うことがとても大切です。
こうした積み重ねが、愛犬・愛猫の「健康寿命」を延ばすことにつながりますので、7歳を過ぎたら、年に1回以上を目安に尿検査・糞便検査を受けるようにしましょう。
まとめ
尿検査・糞便検査は、愛犬・愛猫の体の中で起きている変化に気づくための、大切な窓口です。
尿からは腎臓や尿路、代謝に関する異常が、便からは腸内環境や寄生虫感染などのサインが読み取れます。
たとえ元気そうに見えていても、年に1回以上の健康診断として検査を受けること、そして日頃の排尿や排便の様子をよく観察することが、病気の早期発見・早期対応につながります。
姫路動物病院
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