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猫の慢性腎臓病┃再生医療の利用で腎機能の低下を遅らせる

猫と生活している飼い主様にとって、慢性腎臓病は非常に身近で心配な病気のひとつで、特に高齢の猫においてはそのリスクが高まります。
実際に、7歳ごろから発症率が増加し始め、15歳以上の猫の約80%が慢性腎臓病を患っているとされています。
この病気はさまざまな原因によって腎臓の機能が徐々に低下し、一度発症すると、腎臓を元の健康な状態に完全に戻すことはできないため、進行を遅らせることが重要になります。

今回の記事では猫の慢性腎臓病について、原因や当院での治療方法などを解説します。

■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ

 

原因


高齢猫で慢性腎臓病が多発するはっきりとした原因は解明されていません。
しかし、以下の要因が発症に関与している可能性があると考えられています。

細菌や猫伝染性腹膜炎(FIP)等のウイルスの感染による腎炎
嚢胞腎、腎臓腫瘍など腎臓そのものの病気
免疫疾患などによる腎炎
外傷
薬物などによる中毒
心筋症やショックなどによる腎血流量の低下
結石や結晶などによる尿路閉塞
遺伝(アビシニアン、ロシアンブルー、ペルシャ、チンチラ、シャム猫、ヒマラヤンなど)
高カルシウム血症、低ナトリウム血症 など

猫のFIP(猫伝染性腹膜炎)についてはこちらで解説しています

 

症状


慢性腎臓病が厄介な点は、飼い主様が異変に気付く時点で既に病気が進行していることにあります。
腎臓の機能が50〜75%損なわれるまでは、腎臓の片方が機能不全になった場合に起こる代償機能や、体の恒常性維持メカニズムが働くため、食欲不振や体重減少などの明確な症状が表れにくいのです。
これが、慢性腎臓病が初期段階で発見されにくい大きな理由です。

慢性腎臓病は、その進行度に応じてステージ1からステージ4までに分類されます。

ステージ1
症状はまだ見られず、血液検査も正常範囲内であることが多いです。しかし、尿検査では尿比重の低下や蛋白尿、画像検査では腎臓の形状に異常が見られることがあり、腎機能は正常の約3分の1程度に低下していると推測されます。

ステージ2
多飲多尿という慢性腎臓病の初期症状が見られ始めます。この段階で、ほとんどの猫は元気で食欲も普通ですが、腎機能は正常の約4分の1にまで低下しています。この段階では、飼い主様がなかなか異常に気付かないことがあります。

ステージ3
腎臓の機能低下がさらに進み、老廃物や有害物質の排泄不良により尿毒症が進行します。その結果、口腔粘膜や胃粘膜が荒れ、口内炎や胃炎を起こしやすくなります。食欲低下や嘔吐などの症状も表れ飼い主様が異常に気付くのは、この段階になってからです。

ステージ4
尿毒症がさらに進行し、ステージ3で見られる症状が重篤化します。この最終段階では、生命を維持することが極めて難しい状態になります。

 

診断方法


猫の慢性腎臓病は身体検査、尿検査、血液検査、レントゲン検査、エコー検査などの結果を総合的に評価して行います。

身体検査
脱水症状の有無や、血圧測定などを行います。

尿検査
尿比重の低下、タンパク尿などが検出されないか確認します。

血液検査
慢性腎臓病の診断において血液検査は欠かせません
慢性腎臓病ではBUN (尿素窒素)、クレアチニン、SDMAが上昇することがほとんどです。SDMAはBUNやクレアチニンが上昇するよりも前に異常を示すことがあり、そのため慢性腎臓病の早期発見に特に有効です。

画像検査(レントゲン検査・エコー検査)
腎臓のサイズの測定や、腎臓腫瘍、尿路結石の有無、膀胱内部の状態を確認します。

 

治療方法


残念ながら、慢性腎臓病によって一度失われた腎機能が回復することはありません。そのため、病気の早期発見と適切な治療によって腎機能の低下を遅らせることが重要です。
具体的な治療としては、食事療法や皮下点滴、慢性腎臓病によって引き起こされる諸々の症状への対症療法が中心となります。

当院ではさらに腎機能の低下を遅らせるために再生医療を実施しています。この方法では、初めに約1~2週間の入院でβ-NMNや幹細胞培養濃縮エキスなどを静脈に点滴し、腎臓の細胞や血管の再生を促します
退院後は、飼い主様がご自宅で皮下輸液を行うことになりますが、皮下輸液の方法はしっかりとお伝えしますのでご安心ください。

さらに、ロイヤルカナン社の「腎臓サポート」など食事療法も併用されます。また、人の再生医療で使用される技術を応用した、MaoMao(株式会社Liu)というサプリメントをご提案しています。

 

予防法やご家庭での注意点


慢性腎臓病の確実な予防法はありませんが、普段からお水をたくさん飲ませ、適切なフードを適量与えることが予防には重要です。

また、再生医療は慢性腎臓病の初期であればあるほど、より効果的であるとされています。そのため、愛猫の健康状態に早く気付けるよう、定期的な健康診断の受診が推奨されます。
加えて、普段から猫の飲水量や排尿量を観察し、何か異変が見られた場合にはすぐに動物病院を受診することが、慢性腎臓病の早期発見や進行の遅延に繋がります。

 

まとめ


慢性腎臓病の研究は日々進んでおり、治療方法なども日々アップデートされています。
動物病院によって治療方針が異なる場合もあるため、飼い主様が納得できる治療を提案してくれる相性の良い動物病院を見つけておくことも大切でしょう。

また、セカンドオピニオン、サードオピニオンに関するご相談も受け付けております。ご心配なことがございましたら、お気軽にご相談ください。

 

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