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皮膚疾患について|痒み、脱毛、フケ…愛犬・愛猫の皮膚トラブルは大丈夫?
犬と猫の皮膚トラブルは動物病院での診療件数が多い一般的な疾患です。しかし、皮膚病は原因や病態が多岐にわたり、原因に対した症状や治療法が数多くあるため、正確な診断と適切な治療が必要とされます。
皮膚病を放置すると、痒みや脱毛といった症状が進行してしまうため、早期治療が必要です。
今回は犬と猫の皮膚病について、代表的な疾患や対策方法などをご紹介させていただきます。
■目次
1.犬と猫の皮膚疾患とは
2.皮膚疾患にかかってしまったときのリスク
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
犬と猫の皮膚疾患とは
犬や猫は様々な皮膚疾患にかかりやすい生き物で、それぞれの病気には特有の原因と症状があります。
ここでは、犬と猫でよく見られるいくつかの代表的な皮膚疾患について解説します。
<犬の代表的な皮膚疾患>
・膿皮症(のうひしょう)
原因:細菌の過剰増殖により発生し、特に皮膚のバリア機能が弱まっている犬に多く見られます。
症状:痒みや皮膚の赤みが特徴的です。
・脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)
原因:皮膚の油分バランスが崩れ、皮脂が過剰に分泌されることで発生します。
症状:「皮膚や毛がべたつく、フケが出る、皮膚の乾燥や臭いが強くなる」などがあります。
・マラセチア性皮膚炎
原因:マラセチアという真菌の過剰増殖によって起こり、特に湿気の多い環境や脂漏性皮膚炎のある犬に見られます。外耳炎を併発することもあります。
症状:痒みや脱毛。特に首や脇の下などに赤みが現れます。
<猫の代表的な皮膚疾患>
・蚊刺咬性過敏症(ぶんしこうせいかびんしょう)
原因:蚊の唾液に含まれるアレルゲンに対して過敏反応を示すアレルギー疾患で、猫に多く見られます。
症状:顔や耳、肉球など特定の場所に痒みを伴う丘疹が出ます。
・舐性皮膚炎(しせいひふえん)
原因:ストレスやアレルギーなどが原因で、猫が特定の部位を繰り返し舐めることによって発生します。
症状:舐めた部位に皮膚の赤みや脱毛が見られます。
<犬・猫ともに多い皮膚疾患>
・ノミアレルギー性皮膚炎
原因:ノミの唾液に含まれるアレルゲンに反応して発生します。
症状:強い痒み、皮膚の赤み、脱毛が特徴です。
・アトピー性皮膚炎
原因:遺伝的な要素、環境因子(花粉、ハウスダスト、ダニなど)、皮膚のバリア機能の低下、などが関与します。
治療:皮膚の痒み、湿疹などが現れます。犬は特に足や腹部、顔に症状が現れることがあります。
・皮膚糸状菌症(白癬)(ひふしじょうきんしょう、はくせん)
原因:他の動物や環境からの感染や生活環境中に存在している真菌から感染します。犬も感染しますが、猫に多く見られます。
症状:犬では赤みやフケ、猫では脱毛や痒みが特徴です。
・内分泌性疾患
原因:副腎皮質ホルモンや甲状腺ホルモンなどの、ホルモンの分泌異常により皮膚炎が発生します。
症状:痒みが少ないものの、左右対称に起こる脱毛や色素沈着が特徴です。
皮膚疾患にかかってしまったときのリスク
症状が初期段階であれば治療も比較的簡単ですが、治療が遅れると皮膚状態は悪化し、治療が困難になることがあります。
炎症や損傷を受けた皮膚は細菌や真菌の理想的な繁殖場所となり、感染が広がるリスクが高まり、治療がより複雑になります。二次感染が発生すると、さらに皮膚状態が悪化します。
さらに、治療を適切に行わないと皮膚疾患は慢性化し、症状の管理が難しくなることで、完治に時間がかかってしまうこともあります。
このようなリスクを回避するためには、皮膚疾患の早期発見と適切な治療が極めて重要です。
診断方法
皮膚疾患の正確な診断は、適切な治療法を決定する上で非常に重要です。一般的な診断方法には以下のものがあります。
・押捺塗抹検査
病変部にスライドガラスやセロハンテープを押し当て、染色し顕微鏡で見ることで、皮膚表面の細菌や真菌、寄生虫、炎症の有無を確認する検査です。
・被毛検査
ピンセットや毛抜きを用いて毛を採取し、顕微鏡で観察する検査です。
・皮膚掻爬検査(スクレイピング検査)
皮膚の一部を掻き取り、顕微鏡で寄生虫や細菌を調べます。寄生虫を発見するのに非常に効果的ですが、皮膚を強く擦る必要があるため、少量の出血が伴うことがあります。
・真菌培養
真菌感染症を特定するために、皮膚から採取したサンプルを培養します。
・ウッド灯検査
特殊な紫外線ライトを使用して、糸状菌感染症を診断します。30〜50%程度の確率で青りんご色に光ります。
・皮膚生検
皮膚の小片を切り取り、顕微鏡下で組織を詳細に調べます。
・アレルギーテスト
食物アレルギーや環境アレルギー(ハウスダストや花粉など)を特定します。血液検査や皮膚にアレルゲンを直接塗布して反応を見る方法があります。
治療方法
皮膚疾患の治療法は、原因となる病気に応じて大きく異なります。ここでは、一般的な治療方法として採用されるものをいくつか紹介します。
<抗生物質や抗真菌薬による治療>
細菌や真菌による感染が確認された場合、感染を根絶するために抗生物質や抗真菌薬が処方されます。これらは局所的に塗布する軟膏やクリーム、あるいは全身治療として経口薬や注射薬が用いられることがあります。
<ステロイドや非ステロイド性抗炎症薬>
皮膚の炎症や痒みを抑えるために、ステロイド薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が使用されることがあります。これらの薬剤は、症状の緩和に効果的ですが、使用にあたっては副作用にも注意が必要です。
<アレルギー治療薬>
アレルギーが原因で皮膚症状が引き起こされている場合、アレルギー治療薬が処方されることがあります。これによりアレルギー反応を抑制し、症状の改善を目指します。
<薬用シャンプーの使用>
膿皮症、脂漏症、真菌感染症の問題に対しては、薬用シャンプーが効果的です。これらのシャンプーには、皮膚を清潔に保つ、感染源を除去する、皮膚の炎症を抑える成分が含まれています。
<特別な食事>
食物アレルギーが疑われる場合、アレルギー反応を引き起こす成分を含まない特別な食事への切り替えが推奨されます。これにより、食物アレルギーによる皮膚症状の改善が期待できます。
<アレルゲン特異的免疫療法>
特定のアレルゲンに対する耐性を高めるために、アレルゲン特異的免疫療法(免疫療法)が行われることがあります。これは、長期的な治療法で、アレルギー症状を根本から改善することを目指します。
<生活環境の管理>
環境因子によるアレルギーの場合、ペットの周囲の環境を改善し、アレルゲンに触れる機会を減らすことが重要です。
これらの治療方法を適切に組み合わせながら、治療を進めていきます。
予防法やご家庭で気を付けること
愛犬や愛猫の皮膚状態を維持するためには、日々のケアと注意が必要です。皮膚を定期的にチェックし、赤みや腫れ、脱毛、異常な臭いなどの兆候が見られた場合は、早めに獣医師に相談することが大切です。
また、ノミやダニなどの寄生虫による皮膚疾患を防ぐために、定期的なノミ・ダニ予防薬の使用が推奨されます。
家の中のアレルゲンを減らすことも、アトピー性皮膚炎のリスクを減らす効果的な方法です。ハウスダストや花粉などのアレルゲンを可能な限り減らし、定期的な掃除や空気清浄機を使用して、生活環境を改善することが重要です。
さらに、皮膚を清潔に保つためには、定期的なシャンプーとブラッシングが有効です。
ただし、過度なシャンプーは皮膚の自然な油分を取り除き、皮膚炎を悪化させる可能性があるため、愛犬や愛猫の皮膚タイプに合わせたシャンプーを選び、シャンプーのしすぎには気を付けましょう。
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