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FUS(猫泌尿器症候群)の原因と治療法 | 動物病院での対処法
FUS(猫泌尿器症候群)は、猫の下部尿路にトラブルを引き起こし、排尿が難しくなったり、不快感を伴う症状が見られたりする病気です。
もし、愛猫がトイレの前で長く座り込んでいる、何度もトイレに行くのに少量しか排尿できない、尿の色がいつもと違うなどの様子が見られたら、早めに動物病院を受診しましょう。
今回は、FUS(猫泌尿器症候群)の原因や治療法について詳しく解説します。
■目次
1.FUS(猫泌尿器症候群)とは?
2.原因
3.FUS(猫泌尿器症候群)を放置するとどうなる?
4.緊急性の高い症状
5.診断方法
6.治療方法
7.FUS(猫泌尿器症候群)の予防法と日常的なケア
8.まとめ
FUS(猫泌尿器症候群)とは?
FUSは、猫の泌尿器系にトラブルが起きる病気の総称です。この病気にかかると、頻尿、血尿、排尿困難、排尿時に痛みを感じているような仕草を見せるなど、さまざまな症状が現れることがあります。
特に、雄猫や中高齢の猫はFUSを発症するリスクが高いとされています。その理由の一つとして、雄猫は尿道が細く詰まりやすいため、泌尿器のトラブルが起こりやすいことが挙げられます。
原因
FUSの発症には、さまざまな要因が関係しています。その中でも、食事の内容は特に重要なポイントです。
例えば、マグネシウムやリンが多く含まれる食事は、尿中のミネラルバランスを崩し、尿路結石ができるリスクを高めます。この結石がFUSの原因となることがあります。
さらに、以下のような要素もFUSを引き起こす主な原因とされています。
・尿路結石:尿中のミネラルが結晶化し、それが成長して石を形成します。この結石が尿道を塞ぐことで尿がスムーズに排出できなくなります。
・尿路感染症:尿道や膀胱に細菌が感染すると炎症を引き起こします。感染症が進行すると、頻尿や血尿といった症状が現れます。
・ストレス:急な環境の変化や多頭飼育、トイレが清潔でないといったストレス要因が、猫の泌尿器系に悪影響を与えることがあります。
FUS(猫泌尿器症候群)を放置するとどうなる?
FUSは尿道が詰まる(尿道閉塞)リスクがあり、非常に危険な状態を引き起こします。尿道閉塞が進むと、猫は強い痛みを感じるようになり、排尿ができないことで体全体に深刻な影響を及ぼします。
<膀胱破裂のリスク>
尿が排出されないため膀胱が過度に膨らみ、最悪の場合、破裂してしまうことがあります。膀胱破裂は命に関わる緊急事態で、早急な手術が必要です。
<急性腎障害の発生>
尿道が完全に詰まると尿を排出できなくなり、その結果、腎臓に大きな負担がかかります。この状態が続くと急性腎障害を引き起こし、腎臓の働きが著しく低下します。腎機能が低下すると、猫の体調は急速に悪化する可能性があります。
さらに、尿が腎臓に逆流することで、腎臓自体に直接ダメージを与えることもあり、状況をさらに悪化させることがあります。
<老廃物の蓄積による全身への悪影響>
尿が体内に溜まることで、老廃物や毒素が血液中に蓄積し、中毒症状を引き起こします。
FUSを放置すると最悪の場合、数日以内に命を落とすことがあります。特に尿道が完全に詰まった状態では症状が急激に悪化するため、早めの対応が何より大切です。
緊急性の高い症状
以下の症状が見られた場合は、腎臓や膀胱に深刻な問題が起きている可能性があります。すぐに動物病院を受診しましょう。
・何回もトイレに行く
・トイレに行くが尿は出ていない
・お腹が膨らんで硬く感じる
・猫がぐったりして元気がない
・嘔吐や食欲不振が見られる
診断方法
FUSが疑われる場合、動物病院ではさまざまな検査を組み合わせて原因や状態を詳しく調べます。診察では、まず猫の症状や生活環境について詳しくお話を伺った上で、以下のような検査が行われます。
<尿検査>
尿を採取し、以下の項目を調べます。
・尿中の結晶や細菌の有無:尿路結石や感染症の原因を特定するために重要です。
・pH値:尿が酸性かアルカリ性かを確認し、結石ができやすい状態かどうかを評価します。
・尿比重:尿の濃さを測り、腎臓の働きを確認します。
<血液検査>
血液検査では、以下の情報を確認します。
・腎臓の機能:クレアチニンや血中尿素窒素(BUN)の値を調べ、腎臓が正常に働いているかを確認します。
・感染や炎症の有無:白血球数やCRP(炎症マーカー)を確認して、全身的な状態を把握します。
<エコー検査(超音波検査)、レントゲン検査>
これらの画像診断は、膀胱や腎臓の内部を詳しく観察するために行われます。
・結石の有無:尿路結石の位置や大きさを特定します。
・膀胱や腎臓の異常:膀胱壁が正常か、異常に厚くなったり盛り上がったりしている場所はないかなど、炎症や腫瘍の徴候の有無を確認します。
治療方法
FUSの治療方法は、症状の重さや発症原因に応じて異なります。ここでは、具体的な治療法をご紹介します。
<軽度の場合の治療>
軽度の場合、薬物療法や食事療法を中心に行います。
■薬物療法
・抗生物質:尿路感染症が原因の場合、感染を引き起こす細菌を取り除くために使用します。
・鎮痛剤:排尿時の痛みを和らげ、猫のストレスを軽減します。
・抗炎症薬:尿道や膀胱に炎症がある場合に処方されることがあります。
■食事療法
専用の療法食を用いて尿のpHを調整し、尿路結石の形成を予防します。この療法食は、尿中のミネラルバランスを整え、結石の再発を防ぐ効果もあります。
特に、低マグネシウムや低リンの療法食がよく使用されます。
<重度の場合の治療>
重度のFUSでは、症状を改善するためにより積極的な治療が必要です。
尿道が詰まっている場合は、カテーテルを使用して尿道を開通させる処置を行います。この処置により、膀胱への負担が軽減され、症状の改善が期待できます。
さらに、必要に応じて結石を取り除く手術や、尿道を広げる処置が実施されることもあります。
治療にかかる期間は症状の重さによって異なり、数日から数週間程度が一般的です。ただし、FUSは再発しやすい病気であるため、治療が終わった後も原因に応じた予防策を継続的に行う必要があります。場合によっては、生涯にわたって予防を続けることが求められることもあります。
FUS(猫泌尿器症候群)の予防法と日常的なケア
FUSの予防には、日常的なケアが重要です。
・水分摂取を促す工夫
十分な水分を摂ることは、尿路結石や膀胱炎の予防にとても効果的です。
毎日、清潔で新鮮な水を用意し、いつでも飲める環境を整えましょう。また、流れる水を好む猫には、給水器やウォーターファウンテンが適しています。
さらに、ドライフードだけでなく、ウェットフードやスープを食事に取り入れることで、自然と水分を摂取できるよう工夫することも大切です。
・適切な食事管理
尿路結石のリスクを減らすには、低マグネシウムや低リンのフードを選ぶのがおすすめです。フードを選ぶときは成分表示を確認しながら、愛猫に合ったものを見つけてあげてください。
また、栄養バランスを考えることも大切です。愛猫の年齢や体調に合わせた食事を用意するために、獣医師に相談すると安心です。
・ストレスを減らす環境作り
猫にとってストレスはFUSの発症リスクを高める原因のひとつですので、安心してリラックスできる環境を整えてあげることが大切です。静かで落ち着ける場所を確保し、寝床や隠れ場所を用意することで、猫が安心できる空間を作りましょう。
また、おもちゃで遊ぶ時間や、スキンシップを通じてストレスを発散させてあげることも効果的です。
・定期的な健康診断
定期的に動物病院で健康診断を受けることは、潜在的な問題を早期に発見するために非常に重要です。
さらに、日頃から猫の行動やトイレの様子をよく観察し、頻尿や血尿、トイレで長時間うずくまるといった異常が見られた場合には、できるだけ早く動物病院に相談するようにしましょう。
まとめ
FUS(猫泌尿器症候群)は、排尿困難や頻尿、血尿などの症状を引き起こし、適切な対応が遅れると命に関わることもある病気です。
日頃から愛猫の様子をよく観察し、異変に気づいたときはできるだけ早く動物病院に相談することが大切です。
日々のケアと早期発見、そして適切な治療が猫の健康と幸せな暮らしを支える大きな鍵となります。
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