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犬と猫のワクチンの頻度は?毎年必要?|予防接種の疑問を獣医師が解決
愛犬や愛猫の健康を守るためには、伝染病の混合ワクチン、狂犬病ワクチン、ノミ・ダニ、フィラリア対策が欠かせません。これらの対策を怠ると、命に関わる深刻な病気を引き起こすだけでなく、飼い主様を含む人間にも影響を及ぼすことがあります。
特に狂犬病は、人と動物の両方に感染する「人獣共通感染症」であり、日本では法律で予防接種が義務付けられています。
また、犬ではジステンパーやパルボウイルス、猫では猫汎白血球減少症などの伝染病が知られており、これらはいずれも重篤な症状を引き起こす可能性があります。
さらに、蚊が媒介するフィラリア症は、放置すると命を脅かす危険な病気です。
加えて、ノミやダニの寄生による皮膚病や感染症も大きな問題となります。
しかし、これらの病気の多くは、適切な予防接種や予防薬の使用によって防ぐことが可能です。
今回は、犬と猫の予防接種の重要性や必要なワクチンの種類、接種スケジュール、気をつけるポイントなどを詳しく解説します。
■目次
1.犬の予防接種について
2.猫の予防接種について
3.ノミ・マダニ予防について(犬猫共通)
4.フィラリア予防について(犬猫共通)
5.予防接種に関する誤解と真実
6.予防接種を受ける際の注意点
7.まとめ
犬の予防接種について
犬の予防接種には、大きく分けて狂犬病ワクチンと混合ワクチンの2種類があります。
<狂犬病ワクチン>
狂犬病ワクチンは、日本の法律で接種が義務付けられているワクチンです。狂犬病は人にも感染する危険な病気であり、発症するとほぼ100%致死的とされています。
そのため、毎年1回の接種が法律で定められており、飼い主様の責任として必ず受けさせましょう。
<混合ワクチン>
混合ワクチンは、複数の感染症を一度に予防できるワクチンで、コアワクチンとノンコアワクチンに分けられます。
■コアワクチン(必ず接種が推奨されるワクチン)
世界的に発生が見られ、重症化しやすい病気に対する予防効果があります。ペットサロンやドッグランなどでは、接種済み証明書の提示を求められることが多いです。
・犬パルボウイルス感染症
・犬ジステンパーウイルス感染症
・犬アデノウイルス1型・2型感染症
■ノンコアワクチン(生活環境に応じて接種を検討するワクチン)
地域や生活スタイルによって、接種が推奨されるワクチンです。例えば、屋外で過ごす時間が長い犬や、多くの犬と接する機会が多い場合は、これらのワクチンの接種を検討するとよいでしょう。
・犬パラインフルエンザウイルス感染症
・犬コロナウイルス感染症
・レプトスピラ症
<ワクチンの接種スケジュール>
混合ワクチンは、子犬の時期に生後2か月、3か月、4か月の計3回接種し、基礎免疫を作ります。その後、1歳以降は年に1回の追加接種を行い、免疫を維持することが推奨されます。
狂犬病ワクチンは、当院では混合ワクチンの3回接種が完了した後、接種を行います。同時に姫路市への登録も行います。
その後は、法律に基づき年に1回の追加接種を行いましょう。
猫の予防接種について
愛猫の健康を守るために、混合ワクチンの接種が推奨されています。犬とは異なり、猫には狂犬病ワクチンの接種義務はありません。
そのため、予防接種は混合ワクチンのみとなります。
猫の混合ワクチンも、コアワクチンとノンコアワクチンの2種類に分けられます。
■コアワクチン(すべての猫に推奨されるワクチン)
コアワクチンは、世界的に広く感染が見られ、重症化しやすい病気を予防するためのワクチンです。特に、外出の有無に関わらず、すべての猫が感染リスクを持つため、室内飼いの猫でも接種が推奨されます。
・猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス感染症)
・猫カリシウイルス感染症
・猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス感染症)
■ノンコアワクチン(環境に応じて接種を検討するワクチン)
ノンコアワクチンは、猫の生活環境や接触する他の猫によって、接種を検討するワクチンです。多頭飼いや外出の機会がある猫は、感染リスクが高まるため、接種を考慮するとよいでしょう。
・猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
・猫クラミジア感染症
<ワクチンの接種スケジュール>
猫も犬と同様に子猫の時期に計3回のワクチン接種が必要で、生後2か月、3か月、4か月のタイミングで接種し、免疫をしっかり作ります。
1歳以降は、年に1回の追加接種を行い、免疫を維持します。
ノミ・マダニ予防について(犬猫共通)
愛犬や愛猫にノミやマダニなどの外部寄生虫がつくと、衛生面だけでなく、感染症や健康上の問題を引き起こすため、しっかりとした予防が大切です。
これらの寄生虫は、かゆみや皮膚炎の原因になるだけでなく、さまざまな病気を媒介することが知られています。
<ノミが引き起こす主な問題>
ノミに寄生されると、以下のような病気や症状が現れることがあります。
・猫ひっかき病(バルトネラ症):人にも感染し、発熱やリンパ節の腫れを引き起こします。
・瓜実条虫(サナダムシ):ノミを介して感染し、消化器症状の原因になります。
・ノミアレルギー性皮膚炎:ノミの唾液がアレルギー反応を引き起こし、強いかゆみや脱毛を引き起こします。
<マダニが引き起こす主な問題>
マダニは吸血するだけでなく、重篤な感染症を媒介することがあります。
・バベシア症:赤血球を破壊し、貧血や発熱を引き起こす病気で、特に犬で重症化しやすいです。
・SFTS(重症熱性血小板減少症候群):ウイルスを介して人にも感染する人獣共通感染症であり、発熱や出血症状を伴い、重症化することがあります。
<ノミ・マダニの活動時期と予防方法>
一般的に、ノミやマダニは春から秋にかけて活発になります。しかし、暖房の効いた室内では冬でも生存できるため、室内飼いの犬や猫でも年間を通して感染リスクがあることに注意が必要です。そのため、季節を問わず1年を通じた継続的な予防が推奨されます。
ノミ・マダニの予防には、動物病院で処方される予防薬が効果的です。最近では、飼い主様が投薬しやすいよう、さまざまなタイプの予防薬があります。
・飲み薬(経口タイプ):おやつのような味付きで、愛犬・愛猫が飲みやすい工夫がされています。
・スポットオン(皮膚滴下タイプ):首筋などの皮膚に垂らすタイプで、投薬が簡単です。
どの予防薬が適しているかは、愛犬や愛猫の体質や生活環境によって異なるため、動物病院で相談し、最適なものを選びましょう。
フィラリア予防について(犬猫共通)
フィラリア症は、蚊を媒介として感染し、心不全や循環障害を引き起こす致死的な病気です。一度感染すると治療が難しく、重症化すると命に関わるため、事前の予防がとても重要です。
フィラリア症は犬の病気として知られていますが、近年では猫のフィラリア症も多く報告されています。
犬ほどの感染率は高くありませんが、猫が感染すると突然死のリスクがあるため注意が必要です。さらに、室内飼いの猫であっても蚊に刺されるリスクはゼロではないため、フィラリア予防を検討することが推奨されています。
<フィラリア予防の期間>
蚊が活動する時期に合わせて、4月〜翌1月頃まで毎月1回予防薬を投与し、感染を防ぐ必要があります。
フィラリア予防薬は、感染した幼虫(ミクロフィラリア)が体内で成長するのを防ぐ働きがあります。そのため、蚊の活動開始から1か月後に予防を開始し、蚊がいなくなった後も1か月間継続することが大切です。
<予防薬の種類>
フィラリア予防薬には、さまざまなタイプがあり、愛犬・愛猫の性格や生活スタイルに合わせて選ぶことができます。
・経口薬(飲み薬):おやつのような味付きタイプが多く、食べやすく工夫されています。
・スポットオン(皮膚滴下タイプ):皮膚に垂らすタイプで、錠剤を嫌がる場合にもおすすめです。
・注射タイプ:1回の注射で1年間予防できるため、毎月の投薬が難しい場合に便利です。
また、最近ではフィラリア・ノミ・マダニ・消化管内寄生虫をまとめて予防できるオールインワンタイプの薬もあり、手軽に複数の感染症対策を行うことができます。
予防接種に関する誤解と真実
愛犬・愛猫の健康を守るために、予防接種はとても大切です。
しかし、中には「室内飼育だから予防接種は不要」「毎年接種しなくてもよいのでは?」と考える飼い主様もいらっしゃるかもしれません。
ここでは、予防接種に関するよくある誤解と、その真実についてご紹介します。
■誤解①:室内飼育だから予防接種は不要
「うちの子は完全室内飼いだから、外の病気とは無縁」と思われるかもしれません。しかし、室内飼いでも感染症のリスクはゼロではありません。
・飼い主様の衣服や靴を介して外部から病原体が持ち込まれる可能性があります。
・万が一脱走してしまった場合、他の動物と接触して感染するリスクがあります。
・災害時の避難などで、避けられない外部との接触が発生することもあります。
このような理由から、室内飼育の犬や猫でも、予防接種は必要とされています。
■誤解②:毎年ワクチンを接種しなくてもよい
「ワクチンは3年に1回でよいと聞いた」「毎年接種する必要があるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、ワクチン接種による抗体が1年以上持続する場合もあります。しかし、すべての犬や猫において抗体が長期間維持されるわけではありません。抗体の持続期間には個体差があり、1年ほどで低下してしまうケースも十分に考えられます。
どうしても毎年の接種が気になる場合は、抗体検査を受けて十分な免疫が残っているかを確認する方法もあります。獣医師と相談しながら、愛犬・愛猫に適した接種間隔を決めましょう。
■誤解③:ワクチンの副反応が心配
「ワクチンを打つと体調を崩すのでは?」「以前、副反応が出たことがあるので不安」といった声もあります。
ワクチン接種後に軽い副反応(発熱、食欲低下、軽度の腫れなど)が出ることはありますが、多くは一時的なもので自然に回復します。
ただし、アレルギー反応を起こしたことがある場合は、事前に獣医師に相談することが重要です。
獣医師と相談することで、以下のような対応が可能です。
・アレルギー止めの薬を服用してから接種する。
・接種後しばらく動物病院で様子を見ることで、万が一の副反応にもすぐ対応できるようにする。
副反応が心配な場合は、必ず事前に獣医師に相談し、適切な対策をとりましょう。
予防接種を受ける際の注意点
予防接種を受ける際は、愛犬・愛猫の体調が万全であることが大切です。安心して接種できるよう、以下のポイントを確認しましょう。
1.体調の確認
ワクチン接種前日はもちろん、当日の体調もしっかりチェックしてください。
・食欲はいつもどおりあるか
・嘔吐や下痢をしていないか
・元気がなく、ぐったりしていないか
これらの症状がある場合は、無理に接種せず動物病院に相談し、別の日に延期することを検討しましょう。
2.接種後の過ごし方
ワクチン接種当日は、できるだけ安静に過ごすことが大切です。
・激しい運動や遊びは控える
・シャンプーや入浴は避ける(体温が変化し、副反応が出やすくなるため)
万が一、以下のような副反応が見られた場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。
・顔が腫れる
・目や口の周りが赤くなる
・嘔吐する
・ぐったりして元気がない
ワクチン接種後の副反応は、接種から30分〜数時間以内に出ることが多いため、可能であれば接種後しばらくは自宅で様子を見ましょう。
まとめ
愛犬・愛猫の健康を守るために、予防接種やノミ・マダニ、フィラリア対策は欠かせません。日々のケアをしっかり行うことで、命に関わる病気のリスクを減らすことができます。
正しい知識を持ち、適切な予防を続けることが、愛犬・愛猫の健やかな一生につながります。定期的な健康チェックや予防を習慣にし、大切な家族と長く幸せな時間を過ごしましょう。
姫路動物病院
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