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犬の子宮蓄膿症とは?|避妊手術をしていない犬に発生しやすい病気
大切な愛犬の健康を守るために、飼い主様が知っておくべき病気の一つに「子宮蓄膿症」があります。聞き慣れない病名かもしれませんが、特にメスの犬にとって非常に深刻な病気で、早期の対処が必要です。
子宮蓄膿症は、治療が遅れると命に関わることがあるため、迅速な判断が求められます。
この病気について正しい知識を持つことが、愛犬の健康を守るための一歩となります。
今回は、子宮蓄膿症がどのような病気なのか、どんな犬がかかりやすいのか、そして早期発見のポイントや治療の重要性について解説します。
■目次
1.子宮蓄膿症とは?
2.子宮蓄膿症の主な症状
3.子宮蓄膿症の主な原因
4.子宮蓄膿症の診断方法
5.子宮蓄膿症の治療方法
6.子宮蓄膿症の予防法
7.まとめ
子宮蓄膿症とは?
子宮蓄膿症は、その名の通り「子宮に膿が溜まる病気」で、子宮内で細菌感染が起こり膿が溜まってしまう状態です。この病気は特に中年齢から高齢のメス犬に多く見られ、避妊手術をしていない犬に発生しやすいです。
発症の原因としては、ホルモンの変動や細菌感染が深く関わっているとされています。子宮蓄膿症が進行すると、子宮が大きく膨れ上がり犬の体に大きな負担がかかります。
症状が悪化すれば命に関わることもあり、早急に手術が必要となる場合もあります。
子宮蓄膿症の主な症状
子宮蓄膿症は、初期段階でははっきりとした症状が見られないことが多く、飼い主様が気づきにくい病気です。しかし、進行するにつれて次第に以下のような症状が現れます。
・発情出血が長引く
通常、発情期の出血は1〜2週間程度で止まりますが、子宮蓄膿症の場合は発情期が終わっても出血が続き、膿の混じった分泌物が見られることがあります。
・食欲不振
子宮内での感染が進むと発熱し、食欲が徐々に落ちることが多くなります。突然食べたがらない、以前よりも食べる量が減ったと感じた場合は、早めの受診が必要です。
・多飲多尿
感染によって体内に毒素が広がるため、普段より大量に水を飲み、トイレの回数が増えることがあります。これは子宮蓄膿症の特徴的な症状の一つです。
・お腹が張る
子宮に膿が溜まることでお腹が膨らみ、見た目にも張りが感じられることがあります。膨張した子宮が他の臓器に圧力をかけるため、犬の体に大きな負担がかかります。
・元気がない
病気が進むにつれて、犬の活発さが失われ、動きたがらない、寝ている時間が増えるなどの変化が見られるようになります。
ただし、初期段階では元気や食欲が普段通りであることが多く、これらの症状は徐々に現れる場合があります。特に発情後の行動や体調の変化には注意を払いましょう。
子宮蓄膿症の主な原因
子宮蓄膿症は、主にホルモンバランスの変化や細菌感染によって引き起こされる病気です。以下に、具体的な原因について詳しくご説明します。
・ホルモンバランスの乱れ
発情期が終わると、犬の体内ではホルモンバランスが変化します。
特に「黄体ホルモン」と呼ばれるホルモンが増加し、これが子宮の内膜を厚くする作用を持っています。
この分厚くなった内膜は細菌が増殖しやすい環境を作り出し、そこに細菌が侵入すると感染が進み、膿が溜まってしまいます。
・避妊をしていない
子宮蓄膿症は、特に未避妊の犬に発生しやすい病気です。発情期を経験するたびに子宮内にはホルモンの影響が蓄積され、年齢を重ねるごとにリスクが高まります。
避妊手術を受けていない中〜高齢の犬ほど子宮蓄膿症にかかりやすいため、特に注意が必要です。
・細菌感染
発情期後のホルモンバランスの変化により、子宮は細菌が増殖しやすい状態になります。子宮に侵入した細菌が感染を広げ、やがて子宮内に膿が溜まることで蓄膿症が発生します。
このように、子宮蓄膿症は未避妊のメス犬に特に発生しやすい病気で、発情期後のホルモンバランスの乱れが大きな要因となっています。
子宮蓄膿症の診断方法
子宮蓄膿症の診断には、以下のようなさまざまな検査を組み合わせて行います。
・問診
まずは、飼い主様から発情期の状況や出血の有無、行動の変化、食欲や水を飲む量の変化など、普段の様子について詳しくお聞きします。
・触診
お腹に触って、子宮の状態を確認します。もし子宮に膿が溜まっている場合は、通常とは違う感触を感じることがあり、早期診断の助けになります。
特に、お腹の腫れや硬さが確認できた場合は、子宮蓄膿症の可能性が高いと考えられます。
・血液検査
子宮で感染が進むと、体内の白血球が増え、炎症が起きていることが血液検査でわかります。また、腎臓や肝臓の状態も確認することで、愛犬の全体的な健康状態も把握できます。
・レントゲン検査
子宮が膿で拡張している場合、レントゲンで通常よりも大きく映ります。この検査は、子宮蓄膿症の確認に役立ちます。
・超音波検査
超音波検査では、子宮に溜まった膿の状態や子宮の厚みなど、より詳細な情報を得ることができます。子宮蓄膿症の確定診断には欠かせない検査です。
子宮蓄膿症の治療方法
子宮蓄膿症の治療には、外科的治療と内科的治療の二つの方法があります。愛犬の病状や年齢、全体的な健康状態に応じて、適切な治療法を選ぶことが重要です。
<外科的治療(卵巣子宮全摘出手術)>
最も効果的な治療法は、卵巣と子宮を全て摘出する手術です。膿が溜まった子宮を完全に取り除くことで、感染が広がるのを防ぎ、再発のリスクもなくなります。さらに、この手術により避妊も同時に行うことができます。
・メリット:手術後は再発の心配がなく、完全な治癒が期待できます。
・デメリット:全身麻酔が必要なため、高齢の犬や体力が落ちている犬にとってはリスクが伴います。また、手術後のケアや費用面での負担も考慮する必要があります。
<内科的治療(薬物療法)>
手術が難しい場合や症状が比較的軽い場合には、抗生物質やホルモン剤を使用する薬物療法が選ばれることもあります。抗生物質で細菌感染を抑え、ホルモン剤で子宮の収縮を促し、膿を体外に排出する方法です。
・メリット:手術に比べて体への負担が少なく、麻酔が不要なので体力の落ちた犬にも実施できます。
・デメリット:症状が緩和しても再発のリスクが残ることがあり、完全な治癒には至らない場合があります。そのため、治療後も定期的な観察が必要です。
いずれの治療法を選ぶ場合でも、獣医師とよく相談し、愛犬の体調や飼い主様のご希望に合わせて最適な治療を検討することが大切です。
子宮蓄膿症の予防法
子宮蓄膿症を防ぐために最も効果的な方法は、避妊手術です。
避妊手術を行うことで、発情周期に伴うホルモンバランスの変動を抑え、子宮蓄膿症のリスクを根本的に防ぐことができます。
若いうちに手術を受けることで、将来的な病気のリスクを大幅に減らせるため、愛犬の健康を守るためにも早めの手術を検討することをおすすめします。
その他の予防策として、特に発情期や高齢の犬に対しては、以下の点に注意しましょう。
・体調管理
定期的に動物病院で健康診断を受け、全身の健康状態をチェックすることが重要です。特に発情期が近づく時期には、体調の変化に細かく注意し、少しでも異変があれば早めに対応しましょう。
・食事と運動の管理
健康的な体重を維持することは、免疫力を高め、さまざまな病気の予防にもつながります。バランスの取れた栄養と適度な運動を日常的に心がけましょう。
・早期発見のためのチェック
発情期や発情後の行動や体調の変化、食欲や排泄の異常を見逃さないように観察することが大切です。少しでもいつもと違う様子が見られた場合は、すぐに獣医師に相談してください。
まとめ
犬の子宮蓄膿症は、早期発見と適切な治療がとても大切な病気です。
避妊手術が予防に有効で、普段からの健康管理も愛犬の健康を守るために欠かせません。体調に変化が見られた時は注意深く見守り、早めに対処することが大切です。
少しでも気になる症状があれば、どうぞ遠慮なく当院にご相談ください。
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